テネブラエの森に生息している、2mほどの巨大なカマキリ型モンスター。 手を合わせて、うなだれるように頭を下げる仕草が、まるで神に祈りを捧げているかのように見える為、その名が付いた。 草原などにいる数cmサイズのカマキリと同様にノコギリの歯のよう…
スライムに属するモンスター。 植物食で体内に毒を溜め込むなど、普遍的なスライム≪ポイズン・ジェリー≫が巨大になった姿と、今日では考えられている。 その食欲は非常に旺盛で、木をまるまる一本を消化して食べてしまう豪快な生態があり、神樹を信仰するエ…
弓の名手。 弓を用いて数々の武功を挙げた者、戦場で著しい活躍をした者に贈られる最高位の称号であり、≪サギュタリウス≫の多くは、テネブラエの森から輩出される。 理由の一つにエルフやワービーストなど、弓を日常的に使う狩猟を生業とした亜人が多いこと…
ルクス大公国の貧乏貴族、レイモンド家の一人娘。 マギアアイト洞窟の入り口付近に彼女の出生や半生、死に至るまでの顛末(てんまつ)が詳細に書かれた説明碑があるのは、地元民であれば、誰もが知っているだろう。 詳しくは≪アーマースタチュー・シルヴィア≫…
根茎が人の手や脚、身体を象るように分岐した植物モンスター。 数多の人々を絞首刑に処した跡地に生え、赤子の泣き叫ぶ声とも例えられるマンドラゴラの嬌声を聞いた者は絶命してしまう。 死者たちの血中の塩分をもろともせず、逞しく育ったマンドラゴラの生…
リチャードはタロットカードの隠者のようにうつむきながら、カンテラの弱々しい光だけを頼りに歩を進めていく。 空は赤と黒に塗り潰され、野獣が夜の訪れを告げているように鳴いている。 狼が現れて襲い掛かってはこないだろうか。 生き物が吠える度に、横目…
肩に掛かる長さのミディアムヘアが特徴的な 頭を打って死んだ女幽霊の銅像。 志半ばで亡くなった霊が成仏できず、『マギアアイト洞窟』を徘徊している。 プレートアーマーの下にも重量のある鎧を幾重に着込んでおり、「私の鎧は決して傷つかん」と豪語するだ…
「グルルルル……。ワォォォォン!」 咆哮の主はコボルト。 犬の頭部が特徴的な、二足歩行で歩く人型モンスターだ。 右手には、鉱物を掘る為のピッケル。 血走った黄色の眼。 剥き出しの歯からは、上顎に生えた鋭い犬歯が露出していた。 口からは涎が垂れていた…
用事を終えた一行は街を出て、ルクス大公国の南西にある洞窟に向かっていった。 石ころ一つ見当たらない、湿潤な土壌の平坦な一本道が続いていた。 辺りは閑静で、人影すら見当たらない。 道の両端には、樹齢の低い細長い木々が鬱蒼と生い茂るブナ林。 細い…
翌朝さんさんと降り注ぐ厳しい日差しが、容赦なく体内の水分を奪っていく。 チェインメイルの下にレザーアーマー、更にその下に厚手の長袖シャツを着込んだヘンリーの額には、玉の汗がぽつぽつ浮き出ていた。 丸形のハンカチで、顔や首筋の汗を拭いても、滝…
得られた情報が少なすぎて書くべきか迷ったが、後世に語り継がねばならないと使命感を覚え、図鑑に記した。 或る男はこの神を、『月の御子』と呼んでいたので、一応併記しておく。 唯一確認できた文献には、『Luna Lupus』(月の狼)との文言が残されていた。 …
人魚。 上半身は人間の女で、下半身が魚類のモンスター。 川や海に生息し、通りかかった船を水没させるので、注意が必要。 よく絵画や図鑑に描かれるマーメイドは、漁師が獲物を仕留めるために用いる、フォークに似た三叉の矛トライデントを武器として持って…
数時間後「やったぞぉ、俺が魔女を倒したんだぁ……ムニャムニャ」 「……ベラちゃん、つれないなぁ。ホントにぃ……」 客たちは完全に出来上がっており、テーブルの背にもたれ、眠りについていた。 酒場には、ブタの鳴き声のようなイビキがこだましていた。 もう…
三人が注文を終えると、暫くの間無言のまま時だけが過ぎていった。 どちらでもいい。 話を振ってくれないだろうか。 淡い期待を抱きつつ、ヘンリーは二人はちらちら見遣った。 が、彼らは沈黙を保ったままだった。 しょうがない、俺が切り出すしかないか。 …
ワタリガラス。 光沢のある黒の体躯が特徴的な大型の鳥。 主に小型の昆虫やネズミ、穀物や種実類(しゅじつるい)、不幸にも息絶えた冒険者たちの死肉を食す。 ルクス大公国の権威を象徴する鳥で、魔除けのペンダント、クエスト完了の印章で馴染みが深いだろう…
「アンタも災難だねぇ、喧嘩っ早いのに囲まれてさ」 笑った彼女が身体を小刻みに震わせると、風に揺れる小麦畑みたいに、ブロンドの髪がたゆたった。 引きつった表情で、彼女はローブの女を見遣ったが、ローブの女はそれを無視した。 「助けてありがとう。ア…
「おい、そこの。暑苦しいフードなんか脱いだらどうだ」 喧嘩腰で、大男がローブのヒトに突っ掛かった。 「まぁまぁ、旦那。これでも飲んで落ち着いてくれよ」 少年は穏やかな口調で語り掛け、テーブルのエールが注がれたジョッキを、大男に握らせ、仲裁に入…
酒場にて 「魔女をぶっ倒しゃ、このメシともおさらばだぁ」 円形のテーブルに置かれた、ライ麦が原料の黒パンに目を遣り、大男が言う。 「いやいや、旦那。魔女ァ、俺の獲物ですから」 大男の言葉をニヤニヤ笑いながら、向かいに座るマッチ棒のように細い男…
「邪神復活をもくろむ魔女、シャーリーを討ったものに、莫大な富を与える」 ルクス大公国の大公の言葉を聞きつけ、ルクスの酒場には腕に覚えのある、冒険者たちが集っていた。 「魔女を倒すのは俺だ」 「いいや、俺だね」 酔っぱらった男たちが言い合いをし…
『スライム』に属するモンスター。 黒色の粘性生物で、ありとあらゆるものを溶かしてしまう。 金属製の武器や防具の類は、簡単に腐食させてしまうため、魔術がかろうじて有効。 生態系への影響が懸念されるが、貴重な兵隊を無駄死にさせるわけにもいかず、ど…
『スライム』に属するモンスター。 緑色のネバネバした身体で、ナメクジが這うようにゆっくりと移動する。 他の『スライム』同様、物理攻撃は通りにくいので、魔術で倒すべし。 近年海に投棄されたスライムをクラゲと間違えて誤飲し、多くのウミガメが死亡し…
駅から徒歩20分以上掛け、俺たち四人は会場に辿り着いた。 いつもは見渡す限り灰色の多目的広場が、今日は鮮やかな色彩を帯びていた。 なかでも一際目を引くのが、赤、紫、白の法被(はっぴ)にパンツという出で立ちの、太鼓を叩く男衆。 そして彼らを取り囲む…
八月下旬の午後5時45分頃。 地元で催される夏祭りにわっつんと小早川を誘い、二人が訪れるのを駅の構内で待っていた。 射的、金魚すくい、カキ氷、りんご飴、わたがし、焼きそば、タコ焼き、焼き鳥etc。 おおよそ夏祭りと聞いて連想する屋台は、だいたい…
「おーっす! 悟、いるかぁ」 少女が勢いよく扉を開けた。 白のセーラーに黒の膝丈プリーツスカートと、至ってオーソドックスな中学の学生服に身を包んだ彼女は佐藤奈津美。 悟とは幼稚園の頃からの幼馴染で、男女の垣根を越えた親友だ。 「なんだよ、ナツミ…
春。 冬の肌寒さは残っているものの、にわかに緑が色づき始めている。 外では小鳥が一羽さえずると、合いの手を入れるみたいにチュンチュン鳴いていた。 「絶好のオナニー日和だ……」 恍惚とした表情を浮かべ、悟はぼそりと呟く。 悟はちらちら辺りを見渡し、…
7月の半ばの午後7時。 照明のない薄暗いプールを、空を覆い尽くさんばかりに発達した雲の切れ間から差し込む光が照らし出す。 波打つ水はソーダゼリーみたいに、ぷるぷる揺れていた。 数時間前まで綺麗な水色だったのに、闇に塗り潰され、空はすっかり濃藍(…
社会問題について語るのは、避けていました。 後藤さん湯川さんがISISに人質に取られた際、ツイートを引用してブログ記事を書きました(デマでした)。 その件で自分にはネットリテラシーがないと痛感し、不用意に主義主張を口にすべきではないと避けていたの…
結論からいえばレッテル貼りをするのは、貼ったレッテルに該当する人たちを馬鹿にできる人間だと思い込んでいるからです。 要するにレッテル貼りした人間の差別意識が、ネットという媒体を通じて可視化されたに過ぎません。 例えば昼間ネットに書き込むとニ…
ブログ始めました。 一次小説やゲームの攻略、書評などの記事を公開していきます。 私情で更新が滞ることもあるかもしれませんが、ご了承ください。 何の気なしに遡ったブログの最初の記事には、簡潔にこのブログを作った目的が書かれている。 あれから四年…
ある国道沿いにレンガ造りの喫茶店が佇んでいる。 周囲に人影はなく、駐車場にも片手で数えられるほどしか止まっていない。 少し車を走らせればゴトーヨーカドーという大型スーパーがあり、そこは駅から近く近隣に団地もあるためか土日祝日は盛況を呈してい…