幻獣図鑑「サギュタリウス」

弓の名手。
弓を用いて数々の武功を挙げた者、戦場で著しい活躍をした者に贈られる最高位の称号であり、≪サギュタリウス≫の多くは、テネブラエの森から輩出される。
理由の一つにエルフやワービーストなど、弓を日常的に使う狩猟を生業とした亜人が多いことが挙げられるだろう。
また、矢先に塗る致死性の毒の製造方法は秘伝中の秘伝であり、他種族には知られていない。
三つ目には彼らの人並み外れた視力や、身体能力によるところが大きい。
視力、体格、瞬発力に恵まれたワービーストであれば、弓を構えて射るまでの動作を一瞬で行って遠くの獲物を射抜いてしまうし、ドワーフならば数十㎏は下らないであろう弓を、鉛筆でも持つように軽々と扱ってしまう。
そしてテネブラエの森に暮らす者たちは≪月の民≫と総称されるほど、月への信仰を持つ種族が大多数である点も無視できない。
半月は別名≪弓張り月≫、≪弦月≫とも呼ばれるが、それは半月が、まるで張った弓のような形であることに由来する。
これらの要素が合わさって、≪サギュタリウス≫は生み出されるのだ。

ヘンリー・W・エヴァンス著『幻獣図鑑』より