幻獣図鑑「アーマーナイト・シルヴィア」

ルクス大公国の貧乏貴族、レイモンド家の一人娘。
マギアアイト洞窟の入り口付近に彼女の出生や半生、死に至るまでの顛末(てんまつ)が詳細に書かれた説明碑があるのは、地元民であれば、誰もが知っているだろう。
詳しくは≪アーマースタチュー・シルヴィア≫の項も参照のこと。
さて不注意で夭逝し、未だに成仏できない娘を偲んだ彼女の父君は「生前買ってやれなかった剣を持たせてやりたい。そして剣を携えた彼女を一目見たい」という切実な願いを、我々に訴えた。
このクエストを完了するまでの彼女の顔は、眉間にしわを寄せ、下唇を噛み締めるように口を閉じており、どこか怒っているかのような印象を受けた。
しかし終了後には剣を天高く掲げて、猛獣が獲物の動物を威嚇するように口を大きく開き、一人の騎士として勇ましく映るのだった。
肝心の強さであるが、武器を手に入れたことで、手が付けられないほどのモンスターに変貌した。
より高みを目指したい冒険者は、勝負を挑むのも一興。
……ここまで褒めちぎったが、性格は相変わらずのままである。
「ハーッハッハッハッ! 口ほどにもないな。さぁて、次の挑戦者は誰だ?!」
今日もマギアアイト洞窟では、彼女の高らかな笑い声が響いていることだろう……。

ヘンリー・W・エヴァンス著『幻獣図鑑』より