2016-09-01から1ヶ月間の記事一覧

かみきりむしのいないなつ(全文ひらがな)

ぽかぽかてんきの、なつのことです。 きからでるあまいみつを、たくさんのむしさんたちがすっていました。 くろとうすいきいろのはねのちょうちょさん。 そのよこには、ちゃいろのよろいをあたまとせなかにきた、かぶとむしくんとくわがたむしくん。 みんななか…

怪奇小噺 霊能テスト 第六話

ギィィ……重たい鉄の扉が開かれる鈍い音にびっくりして目を覚ます。 いつの間にか寝入ってしまったようだ。 寝ぼけ眼をこすると、思わず卵を丸呑みにする大蛇のように大きく口を開けて、ふわぁ〜ぁと気の抜けるあくびをかいた。 寝足りない身体を何とか起こし…

怪奇小噺 霊能テスト 第五話

僕が手を離すと、貴也はまた腕をだらんと垂らす。 と同時にうなだれ、まるで生気がなくなってしまったように全身を脱力していた。 呼吸を止めたまま、まばたき一つせず、ただただ一点を凝視している。 その様子から、人間味らしいものは一切感じられなかった…

怪奇小噺 霊能テスト 第四話

翌日、僕は貴也の家に泊まる為、彼の住む寂れた団地が歩いていた。 周りには人っ子一人いない。 「貴也と一緒にくればよかったな」 僕の愚痴は反響することなく、虚空に消えていく。 正直、出来ることなら貴也の家にはいきたくなかった。 それは貴也が団地で暮ら…

帰宅すると、僕はいの一番に携帯の電源を点けた。 時代遅れの折り畳み式のガラケーであるが、最低限の機能は備えており、扱いやすいので僕はガラケーが好きだ。 電車に乗る際、優先席の近くに行ってしまうかも知れないから、その時に消してそのまま家に着く…

怪奇小噺 霊能テスト 第二話

補習帰りの同校の生徒が、黒づくめのサラリーマンばかりの人ごみで、ぽつぽつ散見していた。 高校指定の制服は青地のブレザーで、かなり目立つ。 夏だというのに長袖を着せられて、見ているだけで暑くなってくる。 人が増え、様々な好奇の目が僕達を向けられ…

怪奇小噺 霊能テスト 第一話

駅へ着くと、僕と貴也は改札口の真横に設置されている公衆電話の元へ向かった。 公衆電話は構内にあるからか、長方形のガラス張りの空間にはなく、剥き出しのままで、台には分厚くしわくちゃなハローページが置かれている。 「ほんとに花子さんなんか出るの…

怪奇小噺 霊能テスト プロローグ

「かけてはいけない電話番号って知ってるか?」 友達の貴也(たかなり)が、目を見開き、薄い笑みを浮かべながら、内緒話でもするように、小さな声で喋り始めた。 夏休みの補習終わり、夕方の時分のことだった。 正直、貴也から聞かされる話はヤオイ(山なし、…